百の拾壱
人生是麻雀 其の二
里蔵 光
この振り込みから、自摸がガラリと悪くなった。とても、手にならない。私は攻撃にでるのを暫く控え、とにかく防御一辺倒の打回しをして居た。――こんなことをして居ては、何時まで経っても、ツキを引き込めない。そんなことは解って居る。しかし、まさにくず手で、如何仕様も莫かったのである。
場は疾うに南入して居た。起家が三本積んだ以外は、全てあっさりと流れ、南一の親も、南家のキックで、あっけなく片づいた。そして南二局。私に突然、勝負手が流れ込んだ。

そして第一自摸が、南だったのである。一瞬、四暗刻が頭をよぎったが、しかし、其れ迄のツキを考えると、どうも胡散臭い。まさか、全自動卓で、積み込みがあるはずはないが――私も其れを警戒したわけではないが、こんな時、屹度自摸はクズ牌の様な気がした。
対面の一見大人しめの学生が、第一打に緑撥を切っている。断么の決め打ちだろうか。上家の第一打牌は、九索。私は、取り敢えず緑撥を振った。其れから九順、私の手は次のような形になった。

そして、引いたのは白板。三筒は河に一枚出ている。九索は既に河に二枚あるので、四暗刻の為にはラス牌の三筒を引き込まねばならない。私は小考の末、一盃口に妥協して一筒を落とした。そして切った途端に、ラス牌の三筒を引き、自摸切りした。そして終盤、ダマでは張れないと悟って、下家から白板を啼き、七索を切ってテンパイ。しかし、形が悪い。啼いた御蔭で、一盃口さえもつかない。だが自摸が悪く、穴二筒待ちの悪手は変わらずに、愈々最後の自摸が廻ってきた。上家の刈り上げ頭が手を止めて悩んでいる間に、私は自分の自摸牌を盲牌して居た。――二筒である。表情を変えず、牌を起き、上家の捨てるのを待った。
「――ワンチャンス! 八筒!」
「ロン!」
学生の手牌が倒された。私は無言で、手を崩した。
ツキが莫い証拠である。安手とは云え、自摸る寸前で他家に和了られる。こりゃ、打ち方を変えた方が好いかな。そんなことを考えながら、配牌を取ってきた。――そして其れは、またしても勝負手だったのである。
(つゞく)
96/12/08 (日) 04:26